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【パリ通信】Vo.14

[更新日] 2017年6月13日

パリ通信
アメリカのパリ協定離脱で揺れ動くパリ 6・13・2017
 アメリカのトランプ大統領が6月初め、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を宣言し世界に衝撃を与えました。世界第1位と第2位の二酸化炭素排出国である中国とアメリカを含む世界195カ国が締約した協定は、2015年末にパリで結ばれました。
 筆者の小中高の同級生が当時、環境省の事務次官だったことや、11月13日に130人が犠牲となる同時テロが発生した直後ということもあり、鮮明 に記憶しています。困難な交渉を乗り越え議長国として協定成立に持ち込んだフランスは、自慢すべき成果でした。
 しかし、世界第2位の二酸化炭素排出国であり、協定への最大の支出国アメリカの離脱は、その成果を霞ませています。フランスは環境大国を自認し、環境政策は経済再生の切り札と考えられてきました。それを象徴するが、2007年10月にサルコジ仏大統領(当時)が始めた円卓会議、「環境グルネル会議」です。
 グルネルとは1968年の学生運動収拾の協議を行ったパリの地名で、実は筆者は、そのグルネル近くに住んでいたことがあります。2003年の夏の異常気象による熱波で高齢者約1万5千人が死亡する悲劇が環境グルネル会議の設立に影響しました。
 パリ市は、パリ協定が結ばれたCOP21の会議を前後して、環境優先都市として全国にエコシティー指定し、パリも街づくり構想のデザインが提示されました(写真)。ノートルダム寺院から望むパリの風景は緑に覆われ、不思議な未来都市が考案されました。
 パリは会議前に大規模な同時テロが発生したため、クラン・パレの「パリフォト2015」が中止になるなど、年末イベントが次々に中止に追い込まれる中、環境をテーマにした環境アートの展示が行われました。
 シェパード・フェアリーはエッフェル塔の中心部に彼独特のアイコンが描かれた球体をぶら下げ、地球の危機を表現しました(写真)。また、デンマークのオラファー・エリアソンはパリ中心部パンテオン広場に巨大な本物の氷の塊を設置し、温暖化で氷が溶けていく様を表現しました。
 その他、フランスの都市計画や人間工学を専門とするポール・ヴィリリオが中心となり、建築家やアーティストたちによるパレ・ド・トーキョー現代美術館での映像アートの展覧会が行われ、ストリート・アーティストもパリの街角でインスタレーションを展開しました。
 21世紀の現代芸術にとって環境問題は重要なテーマの一つです。産業革命以降に失った自然と人間性をテーマにした環境アートは、多くの人々に語りかけているものを持っていると言えます。

絵解き
「ベルギーの建築家ヴィンセント・カルバウトがパリ市の依頼で描いた2050年のパリ・スマートシティ」(COPYRIGHT : VINCENT CALLEBAUT ARCHITECTURES, PARIS)


ベルギーの建築家ビンセント

エッフェル塔 「地球の危機」シェパード・フェアリー 2015年11月から12月
エッフェル塔